感詰地獄

読んだ書籍、観た映画の感想や考察をつらつら書き連ねるブログです。

『哀愁しんでれら』の感想・考察【ネタバレ注意】

高崎です。

先日、2月20日で23歳になりました。来年で年齢を数えるのを辞めるので、名残惜しいですね。早いところ、働いて自分でお金を稼いで気の合う仲間と楽しく週末ブチアガりたいです。同期と時間の流れが違うのはやはりちょっと?かなり?寂しいです。お金をあまり気にせず暮らしたいですし、お洋服おブーツおアクセサリー増やしにくいのが苦しいんですよね〜〜。昔の予定だと、26には結婚してるみたいなんですけど...。おかしいな......。

せっかくの誕生日当日なので、バリバリに濃いメイクして何かイベントを入れておこうと思い、雰囲気で気になっていた『哀愁しんでれら』を友人と観に行きました。正直、あまり期待しないまま「雰囲気良さげ〜〜」ってノリで観に行きました。予告もあらすじも目を通してないです。色眼鏡と身構え無しで初体験をしたいので、結構そういうことやります。

 

友人からもウィスキーをもらい、ウィスキーを脇目に駅前でビール軽くキメてから劇場に向かいました。日本酒もだいぶ飲めるようになったので、次はウィスキー攻略しちゃうぞ。

 そしてそして!寄り道した書店で『血まみれスケバンチェーンソー』を見つけたので、嬉しくて衝動買いしたところ、三家本礼先生からハッピーバースデーをいただきまして......!もう最高の誕生日で、部屋で踊ってました。礼ちゃん先生大好き…𝓛𝓸𝓿𝓮...

まだ誕生日関連の予定がちょっと残ってて、そっちも楽しみ!!仙台来てよかったね。

 

 

さてさて、『哀愁しんでれら』の紹介といきますね。

 

 

『哀愁しんでれら』

監督・脚本 渡部亮平

出演 土屋太鳳

   田中圭

   COCO

   山田杏奈 他

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あらすじ

足のサイズしか知らない王子様と結婚したシンデレラは本当に幸せになったのでしょうか?
児童相談所で働く⼩春は、⾃転⾞屋を営む実家で⽗と妹と祖⽗と4 ⼈暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎⽇を送っていました。
しかしある夜、怒涛の不幸に襲われ⼀晩ですべてを失ってしまいます。そんな彼女に手を差し伸べたのが、8 歳の娘・ヒカリを男⼿ひとつで育てる開業医の⼤悟。優しく、裕福な⼤悟は、まさに王⼦様。「ただ幸せになりたい」と願う小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受け⼊れ、不幸のどん底から⼀気に幸せの頂点へ駆け上がりました。
シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”。
しかし小春の物語はそこでは終わりませんでした…

 

出典:映画「哀愁しんでれら」公式サイト 2021年2/5公開

 

 

予告映像はこちら↓

www.youtube.com

 

 

視聴後、友人にオススメしたくてザッと書いたあらすじを送ったのですが、こんな感じです。

 

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我ながら高い要約力...だな!!(ネタバレしたくなくて、どこまで公開情報かめちゃくちゃ悩んだ) 

 

監督・脚本の渡部亮平氏は存じてなかったので、どんな作品を他に手がけているのかな?と思ったところ、バリバリの若手なんですね。これ以前の作品には、『かしこい狗は、吠えずに笑う』という自主制作映画があります。こちらはまだ視聴していないのですが、友人曰く「『哀愁』の記憶あるうちに観ろ」とのことなので、近いうちに観ます。

 

www.amazon.co.jp

 

が、僕は当面「セルフ人権週間」をやっていて、精神を破壊しないやさしい映画を観ると心に決めているので、『哀愁』の記憶を残すべく&マジで面白かったから観に行って欲しいので、ブログに感想と考察を残します。

 

作品像としては、『ジョーカー』の要素を含みつつ、園子温アリ・アスターがニコニコしています。

(僕が紹介している時点で)もうお分かりだと思いますが、クッソ鬱映画です。

鬱よりのトラウマ映画かな。家庭環境につらい過去がある方々にとって、場合によってはかなり精神的ダメージ負うようなシーンもあると思いますので、ご注意をば......。

僕もですね、映画や書籍をおすすめする時に(どうせ鬱映画じゃん...)って身構えられるようになっちゃったのもあって、ちゃんとハピハピな映画や作品を観て話せるようにしていこうって決めたので......。元々は、そっちの方が好きですよ!

今年観た中で平和なイチオシは『雨に唄えば』ですね。もう良さしかない。僕も土砂降りの中ルンルンで踊ってしまえる気持ちが今でもあります。

 

色々書きましたが、何はともあれ僕をきっかけに興味出してくれたら嬉しいですしね......!

 

 

 

さて、ここからはネタバレ注意。ガッツリ感想と考察を並べてます。ちなみに、視聴済みの方は是非ともパンフをお買い求めなさってくださいまし...。ピースが全てはまります。

 

 

 

 

感想

  • 「ヒカリ、良い子じゃないかもしれないよ」

まず最初?の不穏シーン、「ヒカリちゃんがお弁当持ってきてない」なのですが、こちらはパンフレットで答え合わせがあり、「気になってた渉くんの気を惹きたかったから」だそうです。まぁ分からなくもないけど、昼休みにずっと俯いて泣くだけって、小学2,3年生ではかなり「えっ...何......?」案件だと思うんです(当社比)。

小春がプレゼントした筆箱がトイレで詰まっていたのは、じゃあ何で?って言えば、これは劇中でも明確に出てきた「渉くんが盗った」に繋がりますね。

この行動原理に関しては、小春の口から語られていますね。もう"女の子"じゃないってヤツです。

 

僕はヒカリちゃんと小春、大悟のそれぞれの状況を組み合わせて、ヒカリちゃんはもしかしたら他人の気を引くがために盗みや自傷をも憚らない子なのかなぁと、最初は思っていました。

ヒカリちゃんがお弁当を捨てているシーンは、監督インタビューで理由が述べられていて、明確に描写されていないため、劇中のここまでの情報だけでは「ヒカリちゃんが悪い子」という風な視点でしか見えないのです。

 

ヒカリちゃん目線での独白は存在せず、加えて大悟目線でも存在しないため、僕らは小春目線でしか、あの一家を見ることはできないのです。情報精査が上手いですヨ......。

そして、小春の色眼鏡からしか見えないから、大悟の飼い兎の剥製を壊してしまった時に、ヒカリちゃんが悪意を持って小春を嘲るようにも見えてしまう。これはCOCOちゃんの怪演です、マジに。

 

来実ちゃんの葬儀で赤い靴を履きたがった理由、イヤイヤ期の再来は、長期間母親の存在が無かったのに加えて、大悟がこれまでまともに子育てに参加していなかったのではないか?と考えられます。

 

大悟は徹頭徹尾「俺がそう思ったことが正義であり、正しい行動で、完璧なんだ」というスタンスを変えません。『少女革命ウテナ』をご視聴なさった先輩方なら分かるでしょう。王子様は救う対象から見て王子様であるから王子足り得る。暁生は「オトナ」であった。だから王子様ではなくなってしまっていたんです。

 

大悟はどうなのか。

世間体に怯え、完璧な母親を追い求めるマザコン気質に起因した、女性に対しての「理想」を強く抱き続けています。加えて、常に他人を見下しているから優しくしていられる。

行動原理としては、辻褄が合っていますね。「俺が手を差し伸べてやらなきゃダメな奴らなんだ」と嘲笑っているから余裕でいられるし、強く発言できる。吉良吉影流心の平穏ですね。

 

ヒカリに対しても「父親として完璧に仕事をこなしている」+「子どもの将来は母親で決まる」のコンボ理論を持って接していたと考えます。劇中の様子から推測するに、ヒカリちゃんは友だちいないですし、他人と接することが際立って下手です。

大悟は父親としての責務を果たしていると自信はあれ、母親が欠けていることに対して不安を持ち合わせているような素振りがあります(海での小春との会話?)。

「ヒカリを守るためなら何でもする」の言葉に嘘はないにせよ、ヒカリちゃんに対して個の人格を持って接していない、そのような感想を抱くには十分かなぁ。

「自分が母親無しでもここまで立派な大人になれた!」という周囲を見渡した時の自信があるからこそ、「母親が子どもの将来を決める!」=「母親が俺に手をあげるようなダメなヤツだったから、俺はこんなにも醜い」という二律背反を腹ん中に持ってるわけです。

そりゃヒカリちゃんに寄り添えない。自分の弱点を目の当たりにしながら、子どもと接するのが怖いから。俺の邪推だとこんなところですかね。

 

 

30年間、自分の裸体をスケッチし続けたものを額に納め飾り並べているところ、昔飼っていた兎を剥製にして今でも飾っているところ。これらに関しては、小春もドン引きした表情を浮かべていたものの「確かに...」と頷かせる理屈を並べて言い伏せています。

「飼っていたペットの遺体を触れないと言って、親に埋めてもらったアイツより愛がある」「30年間も続けていたらライフワークになっちゃった」と言ったように、恥じることも臆することもなく、クソほど気持ち悪い趣味を他人に見せびらかせる。自分の完璧な正義を持っているから成せる業。

......小春ちゃん!出会って1ヶ月で結婚したのはともかく、ペットを剥製にして飾り続けてる男は流石にやめたほうがいいと思うな!!

 

 

 

さてさて、来実ちゃんの事故死のあたりを。

渉くんの「ヒカリが突き落とした!俺見たもん!」はパンフレットに答え合わせがあります。「筆箱を盗んだ!」の言いがかりをつけられたことに対しての仕返しです。

渉くんが終始、小春の発言などによって嘘吐きの印象を焼印されてる訳なんですがスッゲーミスリードなんですよねこれ...。渉くん、怒ってる時は本当のこと言ってるんです。何でかって、怒ってるから。普段のホラ吹きも、来実ちゃんの気を惹きたいがための見栄っ張りなのは小春の発言から裏が取れます。

 

『哀愁』において、色が強く意味を持っています。青、赤、白。紫もありますが、青と赤の混合でいいのかなと。

小春のウェディングドレス。ヒカリの靴。画材を呑み込む炎。大悟のタキシード。小春のドレス。初夜のシーツ。家族の肖像画の眼。白衣。

あらゆるところに印象を強くすべく、パキッとした色遣いがなされているのが、この作品の素敵なところ。ではそれぞれの色は何を意味するのか?

 

あくまで推測の域を出ませんが、

 

  • 青=理想、完成、未熟?
  • 赤=感情
  • 白=未完成

 

ではないか。

 

 

青に関しては、ほとんどが「理想」の大罪持ち・大悟ですね。ずっと青のイメージです。

家族の肖像画がいつまでも目の色だけ埋まらなかった。そして、青が入れられた。現実とは程遠く、大悟の作風である写実主義的(違うかもしれねェ)な絵の点睛にはあまりにも不自然。これは現実を見据えるほどの精神を保てなくなった、トチ狂ったあの家族が出したうわべの理想の完成形ではないかなぁ。

 

大悟がマジのマザコンなのは、老人ホームでの小春と大悟マッマの会話から見受けられます。「暴力を振るった母親は母親失格である」、だから小春に対しても同じことを突きつける。母親の立場や思い、母親でなくとも他人の立場や心理を感じることができない(見下しているから「理解」はできる。人間失格論法やね。)。

 

 

 

赤色はなんだろう。

ヒカリ、ウェディングドレス、炎......。

ヒントもクソもないので、おそらくは「感情」かな。

抽象的じゃん!って、たしかに...。とはいえ、このくらいの漠然さしかないんです。

喜怒哀楽に起因するものがほとんどであるため、怒りの色、怒りの炎、喜びの赤なのかなぁ......(自信喪失)。

小春が壊れてきている、夫婦で学校殴り込んで泥棒を炙り出そうとしているシーンで、小春が赤い服を着てますよね。この時初めて、大悟の価値観に共鳴した意見を述べ、声を荒げます。俺ァこれ見たくなかったな……。

 

 

白は白衣🥼と未完成の肖像画の目。

これからピースが埋まるよ!って言う、チェックメイトの表れかな。

 

 

ラストシーンで、理想的な家族として完成した3人は教室でキャッキャウフフの至福を過ごすのですが、このシーン、さっきまで白衣であった小春と大悟が着替えているんですよね。

買ってもらったあの青のドレスとヒールを身につけた、シンデレラだった頃のワタシ。

計算をこなし、ハツラツと朗読するヒカリに「流石だな」しか口にしない大悟。

金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」を朗読するヒカリ。オメー、よりにもよってそれかよ......。

  

みんなちがって、みんないい。

 

大悟が否定し、小春が塗り潰され、ヒカリがそれをさらに否定(肯定)する。その目には、その心中には、何が映っているんでしょうね。まさに僕らが目の当たりにした光景なんでしょう。

 

 

 

 

おわりに

本当に当たりを引いたなぁ......って恐ろしい作品(褒め言葉)でした。

アリ・アスター園子温の面影を見ましたもの。"家族とは?"と問いかける作品は数多くあれど、『哀愁』もまたその1作品として携えていただきたいな。

しんでれらの文字に騙されず、男性視点でもこうあってはいけない。他人事ではない。男女で観に行って、視聴後に何も感じないような男でしたらその場で殴って捨てることをオススメします💜

 

去る母親にしがみついて振り払われたトラウマがフラッシュバックする小春。自分を見つめるあの頃のワタシ。小春の母親ももしかしたら、同じ理由があって母親を辞めたのかもしれない。

幾度と発せられる、女の幸せって何?との問い。シンデレラかもしれない、自分で掴むものかもしれない。降ってくるのを待つのも一興かもしれない。

男女関係なく、幸せの形に正解は無いと思いますし、深い関係性は時間の長さだけでは無いとも思います。

それでも、自活できる立場だけは渡しちゃいけない。生殺与奪の権利を他人に握らせるな!とは本当にその通りで、誰かの鳥籠の中で飼い殺しで死んでいいほどに僕らは小さくも軽くもないんですよね。もちろん、王子サマ気取って女性を飼い殺しにしていい権利なんてのも誰も持ち合わせてないですし。

 

罵倒・怒号・理不尽が飛び交い、自暴自棄や軽い自傷行為も流れるため、キャスティングだけで観に行った人はもしかしたら低評価にするかもしれませんね。

この映画に共感性を示すことができ、理解が及ぶということは、ある種ふるいに掛けられた存在だと言ってもいいです。良くも悪くも。

全く感情移入も理解も共感もできなかった人は、嫌味抜きにして、不自由なく歪みなく幸せに生きてきたんだと思います。それは本当に幸せなことですヨ。

切れば血が出る、痛みが走る。それを皆が皆に同様にして持ち合わせている認識ではなく、さらに言えば世間的に女性が強いられる「理想像」、本当にはた迷惑に重たく無責任な言葉で、責任を投げつけられる。

無意識のうちに、他人に理想をぶつけてませんか?かくあるべきと本気で、軽く、当然と、口にしてませんか?

 

 

おわりになんで好きなこと書きますが、家族・恋愛観、友情などの他人との間柄については、僕としては常々言ってる「一緒に地獄に堕ちよう」に尽きると思ってます。地獄すら共に歩きたい、そんな素敵で愉快で尊敬できる人と一緒にいられたら、高め合えたらいいなぁって......!

「一緒に地獄に堕ちよう」、僕にとっては最高のプロポーズですし、「映画一緒に観ようヨ」の誘い文句でもあります。ちなみに僕の中での返歌は「地獄までもついてゆきます」です。返歌は自由によろしくネ!

言い回しとして近い(マジで全然近くない)のを言われたことがあって、「金払って女のまんこ観に行かない?」でしたね。びっくりして思わず、「男にまんこないよ!」って返した覚え。叶わずじまいでしたが。

純粋に、ストリップやバーレスクには興味があって、観劇として異性と観に行きたいんですよね。異性にはどんな風に見えるのか気になりますし、ひとつの文化芸術として観に行く価値、その場に足を踏み入れ全身で味わう価値があるものだと思います。

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近年だと、童磨殿がその価値観を示してくれて嬉しかったですね!蹴落とされましたけど!

 

 

男性としても考えさせられる、重たく鋭く本当にいい作品でした。コメントでもリプライでも、君らとの感想考察意見バトルを楽しみにしてるぜ!語り合いたいな!!

必ず『かしこい狗は、吠えずに笑う』も視聴いたします。

近々観ようと思っていた『終わらない青』と『子宮に沈める』は、セルフ人権週間のため、もう少し後の予定...。オススメもかなり貯め込んじゃっているんですよね。たくさん候補があって嬉しいけど消化し切れてなくて困っちゃう。

 

 

ではでは。